身体によい食べ物というのは、色々考え方がありますが、その中に精製されていない食べ物が身体によいという考え方があります。
「精製」という言葉を辞書でひいてみれば、粗製のものからさらに純良なものにつくりあげること、とあります。「粗製」はといえば、粗雑な製造方法とあります。
とすると、自然食といわれるものは、大雑把につくられたものをよしとしているのでしょうか?もちろん、皆さまはその答えが杏であることはご承知ですが、 いわゆるこの「雑味」であり、純なものからみれば「不純物」といわれて精製されてしまっているものの中に人間が生きていくために欠くことのできない微量栄 養素、いわゆるミネラルが含まれているわけですね。
よくご存じの「塩」なども、一般に販売されているものは純度99%の塩化ナトリウムが「塩」ということになっています。これは精製の極みに近い数値です。
日本で塩を調味料として使いはじめたのは弥生時代。海水やそれに海藻を焼いたものを加えて濃厚食塩水とし、土器で濃縮して食用塩としたのがはじまりだと言われています。
鎌倉・室町時代には海水を汲み上げる「揚浜式塩田」、江戸時代には汐の干満を利用する「入浜式塩田」と発展してきた歴史があります。製造上のコストの問題 から、現在のイオン交換膜法になったのが明治時代。これを境にイオン膜法による食塩を「化学塩」在来法によるものを「自然塩」と区別する呼び名が生まれました。
化学塩の純粋さに比較すれば、粗雑な塩、それが自然塩ではありますが、海水を凝縮することだけによって得られる塩には、様々なミネラル分が溶け込んでいます。
重要なものでは、硫酸カルシウムとか炭酸カルシウムとかのカルシウム化合物、それから塩化ナトリウム、塩化カリウム、そしてマグネシウム化合物等々。何十 種類ものいわゆる微量ミネラルが含まれ、それらの成分をできるだけ残して食するという考え方の塩が私たちの塩ということでしょうか。
お米なども精米と言いますが、精製されたものが白米ということで、ひどい言い方をする人は、お米のカスなどと言われます。玄米を精白(玄米からぬか層と胚 芽を除く操作)すると1割のぬかがとれます。ぬかにはリノール酸、ビタミンB1、ビタミンF、カルシウムなどが含まれています。ということは、玄米にはぬ か層があるので白米よりも栄養分(ビタミン類や繊維分)が多いということです。さらに玄米の中の食物繊維には血清コレステロールが抑制されるという報告 (鈴木雅子女史)もあります。
玄米は炊飯するのに手間がかかるので敬遠されがちですが、それならぬか漬けぐらいつくらないと・・・、ということになるのでしょうね。
それはそれとしてもお米は玄米で食べるのが一番栄養価が高いということは間違いのないことのようです。これもやはり玄米は精製されていないという考え方に通じますね。
現在の日本人の食生活は大変豊かで、ドイツで考えられはじまったカロリー栄章学という見地に立てば世界一の水準ということになります。しかし、戦後、あらゆる食べ物が大量生産、大量流通という観点から作られはじめたことによって、日本人が脈々と食べ続けてきた日本の食、また自然のもともとの状態から大きく かけ離れた食べ物となってしまったことは誰の目にも明白です。そのことは食べ物から当然摂取できるはずであった微量栄養素(ミネラル)を摂取できないとい うことにつながってくるのです。
日本の戦後の急成長、経済大国化に乗り遅れた沖縄は日本一の長寿県ですが、沖耗の食べ物 こそミネラルの宝庫といえます。周辺が海に囲まれ、土壌の中にもミネラルが豊富であり、そこで栽培される農産物にも当然ミネラルも多く含まれています。食 生活も昔と大きな変化はなく、海の幸を多く食しミネラル充分の食生活をしています。
私たち地球人倶楽部でも、会員の皆様にこのようなミネラル豊富な農産物をお届けしたいということで、宮古島に生産者を十数名ネットワークしています。なぜあのような不便なところで生産者をかかえているのかは以上のようなことからなのです。
宮古島で気が付くことは、子供も大人も老人もすべて歯の立派な方の多いのには関心させられます。宮古島の小学生は、毎年歯の優良日本一をとっているという 詰もあり、これらのことは、いかにたべものが私達の身体に影響を与えているかの証明に他ならないのではないでしょうか。
「自然食品」という言葉があり、無農薬栽培あるいは化学肥料を使っていないもの、また無添加食品などを総称してとらえるむきが一般的であると思いますが、私の考える自然食品というものは、このような安全性という側面ばかりでは問題があるのではないかということです。
例えば加工品ばかりでなく「ほうれん草」。有機栽培のものと化学肥料を使った一般栽培のものと、水耕栽培のもの。同じほうれん草でも栽培方法が違うと「栄 養価」が違うことをご存じですか?
もちろん農薬がかかっているとか、環境に対しての配慮だとかそういった観点でしか現在の有機農業は語られていません が、もうひとつ忘れてはならないのがこの栄養価という部分です。
情報化時代であり、連日テレビや雑誌で身体によいという食べ物が紹介されています。「ココア」が身体によいとなれば日本全国ココアが品切れ、というわけで すが「ココア」も含めて一般に体に悪い食べ物はあまりありません。ココアも純粋にココアだけ飲んでいればよいと思いますが、毎回砂糖やミルクと⊥一緒にガプ飲みということになれば、ココアの栄養の元も子もなくなり、かえってからだを悪くしてしまうことになりかねませんね。食べ物の基本は、バランスよく色々なものを美味しくいただき、そしてその食べ物そのものにその食物がもつ本来の栄養素が備わっていることが一番大切であると考えます。
私自身、実に粗製な人間でいつかはロマンスグレーといわれる精製された、いや洗練された紳士と呼ばれたいものですが、いやはや...。
では今回はこの辺りで。