第3回 食べ物の話「お米の話」

2009年10月23日

私たちの住む東京・神奈川は、梅雨といっても大した雨も降らず、今年はカラ梅雨といってもいいほど。先日には給水制限のニュースが伝えられたことは皆様すでにご承知のことと思います。
梅雨といえば、レインコートや長靴の心配がつきものであったのにその心配のないのはありがたいのですが、都会から一歩足を践み出せば梅雨は真っ盛り。全国的にみて雨量は多く、一部ではすでに被害すらでているという皮肉な状況でもあるようです。

 先日は東北の生産者巡りをしながら稲の状況を見て参りましたが、春先の低温の影響もなくしっかりと根をはりスクスクと育っておりました。まずは今年のお米はほぼ大丈夫といったところです。
  梅雨に雨がしっかりと降れば、お米は豊作というわけですが、一方では野菜の不作も伝えられ、このままいけば秋には大幅な品不足になるのではないかと噂されています。
「米の豊作の時は野菜は不作」。昔から言われてきたことですが、現在の一般市場は輸入農産物のウエートが高く、国内産の不足は輸入でカバーするパターンが定着しています。しかし、今年の場合海外でも気候変動による不作が深刻ですので、2つの不作が重なり合ってしまうと、秋からの野菜の価格の上昇は必至とい うことになります。

 さて、お米の話が野菜の話に脱線してしまいましたが、それはさておきましても、お米の成長は順調で秋の豊作が期待されます。
  お米も今年から自由化ということになり、従来のように国会に生産者が集結して国の米価決定に圧力をかけるようなことも見られなくなります。今後、米価を決 めるものは自由市場になり、人気銘柄は高く、そうでないお米は安くというように市場競争原理の中での米相場がこの秋から展開されることとなります。
  このような品質面での価格変動というものは当然としても、自由市場での価格に最も影響を与えるものは、需給のバランスということで、このことを懸念して国では今年も厳しい減反政策を実施しています。
「自由化とは、作るのも自由、売るのも自由。何故規制するのか」
  これは米どころの生産者の声ですが、皆が好きなようにお米を作ったらどうなるのか。その背景をお話したいと思います。
food03b.jpg現在、わが国で消費するお米は、何もかも含めて(加工用も)総需要約800万トンといわれています。日本の米農家が減反せず米を生産すると、ゆうに1000万トンは越えてしまいます。需給のバランスは大きく崩れ、結果は米相場の暴落ということにつながってきます。
「自由」とは文字通り自由であって、何をしても構わないわけですが、そこには厳しい「自己責任」というものが伴うわけです。米価格の下落は、結果としてヤル気を失った多くの農家の離農、あるいは廃田となってゆくわけです。自由化といえどもお節介をやく国の減反政策の背景はこの辺りにあるわけです。
  ある学者の発表した論文によれば、このような国の減反政策があったとしてもお米の相場は自由競争原理の働きで徐々に下落していくことは間違いなく、今後 10年の間に、現在の日本の米農家約400万戸に大きな打撃を与え、約半分の200万戸が米づくりを放棄するであろうという予測をたてています。
  このシミュレーションは、一学者の説であると一笑に伏すこともできますが、農業に関係しているものにとっては非常に深刻かつ現実味のある話であり、私自身もこの説を可能性の高いものとして受け止めています。仮に、この論が正しいと仮定して考えると、約10年後、日本の米の生産量は約600万トン程度となります。先に話しましたように約800万トンの需要があるわけですから、約200万トンの不足となり、需要と供給の逆転が起こります。何年か前に皆様も経験された米不足の状況が考えられることになります。

「また作ればいいじゃない」。こんな声も聞こえてきそうですが、米づくりは工場で製品を作るのとは違います。一度廃田された農地は、地力が回復するまでに早くて5年、遅くて10年かかります。また、再び誰かが作るという問題も深刻で、現在でも農業後継者がほとんどいない状況の中、果たしてその頃農業を誰がやるのかということもあります。

ではどうなるのか、といえば考えられるのは不足分の米の「輸入」ということです。大きなビジネスチャンスの到来ということでしょうか。
国内問題から世界に目をむけると、現在世界で生産されるお米は約1500万トンといわれています。この中で日本人が好むであろうといういわゆる「ジャポニカ米」は、約150万トン程度生産されていますが、このお米を海外で増産し、輪入していくというものです。タイ米は、日本人は食べないということは実験済 みのことなので、日本人好みの美味しい米を作って、価格も割安であれば消費者も大歓迎。それですべて丸く納まり一件落着というわけです。このようなシナリオで大きく動き始めているのが世界の米市場といえるのではないでしょうか。

 食料の海外依存。主食でもあり日本人の生命ともいえる米すらこのありさまで、一体全体日本の農業は何処にいってしまうのか、という考えも頭をよぎります。
  それはさておいても、外国が不作の時にどうするのか。また、日本の米国際市場への参入が米の国際価格にどのような影響を与え、他の国に迷惑はかけないのか。世界的な食料不足が予測される中、日本がこれ以上食料自給率を下げることが賢明なことなのか、等々。様々な問題が心配されるところです。

 地球人倶楽部では、このような将来の米不足が予測されるところから、昨年より福島稲田米に産地変更して対応していく考えです。
3年前の米不足による価格高騰と品不足は地球人倶楽部としても私としても痛恨の思い出として残っています。何故、契約したとおり約束が守られなかったのか...。未だに納得しかねるものがあります。あの100年に一遍といわれる米の凶作の時、価格も上げず、約束どおりに出荷した生産者たちがいます。それが現在取引をしている稲田有機生産者組合であります。food03c.jpgリーダーの伊藤代表は、100人有余の生産者を前にしてこのような話をしたといいます。
「100年に一遍のこの時に、儲けるのか。それとも残りの99年を大切にするのか」。
大きな利益を目の前にしてゆれ動く生産者たちは、この言葉により契約を守ることに同意したのです。100年に一遍のチャンスをものにしたものは、多くの人々の信頼を失い、離れてゆきました。そして私たちも離れました。稲田は多くの人々の信頼を得、活況を呈しています。
  地球人倶楽部は、このような心ある生産者を仲間とし、会員の皆様との約束を守っていきたいと考えています。

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