第11回 食について思うこと

2009年11月23日

1972年、ローマクラブによる「成長の限界」というレポートが出されました。
ローマクラブは、専門を異にする世界の知識人が集まり結成された団体であり、同レポートは日本をはじめ、アジア諸国や欧州などの経済成長と世界人口の増加がこのまま続けば、極めて近い将来、世界はエネルギー、資源、食糧の枯渇問題という成長の壁に直面し、壊滅的な事態を迎えるだろうと警告したのです。それから30 年以上が経過し、21世紀初頭、人類が直面している問題は、当時を一段とスケールアップした石油、エネルギー資源の枯渇問題であり、地球温暖化という環境問題であります。
この意味では人類は、70年代に言われた「成長の限界」に再び直面しているといえるのです。
 国連人工統計部の推計によると、2005年の世界人口は64億6500万で、1950 年の25億人から55年間で2.6倍になっています。2020年には75億人、2050年には90億を突破すると予測されています。ちなみに2005年の 世界人口約65億に対し、アジアの人口は39億で約60%ということになります。
中国やインドの人口増加が著しいためです。中国の人口は、現在の13億人台から2030年には14億人台半ばでピークを迎えますが、一方のインドは、現在の11億人から2050年には16億人に増加し、中国を抜いて世界最大 の人口大国になると見られています。
以上のような人口の増加が予測される中で、地球は果たしてこれだけの人類を食べさせていくことができるのでしょうか。皆様と一緒に少し考えを進め て参りたいと思います。

現在の世界の穀物生産量は、約20億トンといわれています。世界の4大 穀物(小麦6億トン、とうもろこし6億トン、米6億トン、大豆2億トン) 穀物 20 億トンは、世界の食糧生産量の約半分です。
1 人当たりの穀物消費量を大雑把ですが計算してみると、 2005 年19.9 億トン÷64.6 億人 = 1人当たり 308kg となります。
この1人当たりの消費量が将来も変わらないとして計算すると、
2020 年 75 億人×308kg = 23.1 トン
2050 年 90 億人×308kg = 27.7 トン
が必要となります。
以上が1人当たり穀物消費量の単純計算ですが、穀物消費量は、食生活 の高度化、多様化にともない、畜産物や卵などの間接消費の拡大に影響するため予測としては2020年に約25億トン、2050年には30億トンが必要 となってくるとみられています。これだけの需要に対して供給することは可能なのか、世界の穀物生産量は「耕地面積」と単収(単位面積当たり収 穫量) にあります。世界の耕地面積は、1960 年代初めより、14億ヘクター ルで頭打ち傾向であり、穀物の耕地面積も7億ヘクタール台から、最近は6. 5億ヘクタールに減少しているのです。工業化に伴う農地の工業用地への 転換、砂漠化、塩害などが要因となっています。このようなことで食糧の増産は、耕地面接の拡大によって果たすことが難しく、単収のアップに期 待をかけるわけですが、70年代までは毎年3%で延びていた単収も、90 年代に入ってからは1%台前半まで低下しているのです。肥沃な土地の減少、地球温暖化による近年の干ばつや洪水などの異常気象の多発が、生産の不安定傾向に拍車をかけているといえるのです。
更には21 世紀を展望した時に最も深刻な環境問題は、「水の問題」とい われています。地球上に存在する水の量は、13.8 億立方メートルで、内、 淡水は、0.35 億立方キロメートルでわずか2.5%です。そのうち3分の2 は、 南極の氷雪であり、比較的利用しやすい河川、湖沼などの水は0.01%に すぎないのです。これらの河川、湖沼にあわせて地下水などを使うことで、 地球上の水の1%が使える水の量なのです。この限られた水資源に対して、 工業用水、農業用水などへ水需要は急増しているのです。
世界の農業地域でも、水不足は深刻で、日本のような食糧を大量に輸入している国は、他国の水資源を大量に使っていることになり、今後問題に なってくると思われます。
地球温暖化が指摘される中で、世界の主要穀物産地での干ばつ、多雨、 洪水、台風、ハリケーンなどの異常気象が頻発しています。オーストラリアでも100 年に一度という干ばつが2年も続いています。エルニーニョ、 あるいはラニーニャ現象との世界の異常気象との関係は大きいようです。
世界的な高温は、継続して続いており、米や大豆、とうもろこし、小麦な どの穀物は、気温が1度上がると収量が10%減少するという収穫データによる分析が出ているのです。一般に、作物は高温乾燥天候下では、水分の蒸散を抑えるため、葉をきつく巻く性質があり、その結果光合成が低下し、 成長がとまってしまいます。九州地方でも気温上昇にともない、美味しかったお米がまったく取れなくなってしまう状況が実際に起こっているのです。
2020年、75億人。今から18 年後です。2050年は42年後です。
そのとき、世界の食糧はどうなっているのでしょうか。もはや楽観は許されません。世界人口のうち、わずか2%弱の日本は、世界の穀物生産量の 10%を輸入しています。世界の海産物の10%輸入しています。高級マグ ロは漁獲量の内80%が日本人の胃袋に収まっているのです。「メタボリック シンドローム」は、日本では流行語となっています。肥満が原因で生活 習慣病を招き、高齢化ともあわせ医療費の増大という国としてもゆゆしき経済問題になってきているのです。
現在の世界の飢餓人口は8億人といわれています。
今私たち日本人はどこに向かって進んでいるのでしょうか。

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