第18回 有機農業について「食べ物の値段」

2009年11月05日

今から約30年前の1964年の公務員の初任給は19,100円で、現在1995年の公務員の初任給は約190,000円といわれていますので、30年で約10倍になったということになります。
  ある醤油メーカーの社長さんが、醤油がミネラルウォーターより安いのは許せないという話をしていたのを聞いたことがありますが、今回は食べ物の価格が時代の移り変わりの中でどのように変わってきたのかを皆様とともに考えてみたいと思います。

「値段の風俗史」という本によりますと、明治26年(1893年)の醤油1升(1.8リットル)の値段は9銭。一方理髪料金は4銭であったと書かれています。

明治38年(1905年)には、それぞれ[醤油] 32 銭 [理髪] 15銭
大正 9年(1920年) 84 銭 45銭
昭和11年(1936年) 50 銭 45銭
昭和25年(1950年) 87.84円 60円

というような具合で、醤油と理髪料金では、常に醤油の方が高い状況で推移してきたことがお分かりかと思います。                     
  ところが、昭和39年(1964年)には、醤油189円、理髪320円と両者は初めて逆転してしまいました。
それから現在までの約30年間で、醤油は一般品で約3倍から4倍になったに過ぎませんが、理髪料金は約10倍から12倍ということになっています。
  今から30年前(1964年)、ちょうど日本が高度成長の時代に入りだしたときから段々逆転現象が起きてきているのです。      ゝ
  公務員の初任給は30年間で約10倍というわけですから、理髪料金は世間並みの上昇といえますが、醤油と同じ大豆製品の代表であるお豆腐の値段をみてみますと、

明治41年(1908年) 1丁 1銭
大正 8年(1919年) 4銭
昭和11年(1935年) 5銭
昭和25年(1950年) 12銭
昭和34年(1964年) 25円

  現在は、一般品で1丁lOO円から150円として、約4倍から6倍ということで、醤油と同じく物価の優等生ということになるのかと思います。

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 醤油と豆腐でご紹介いたしましたように、食べ物の値段というものが、1964年(昭和39年)前後から所得に対しての伸びよりも低い状態で推移してきている背景には、様々な要因があると思われますが、そのひとつに製造方法の革新というものが存在しています。
  私たち地球人倶楽部が皆様にお届けしている井上醤油(名字が私と同じですが、親戚ではありません)は、1升(1.8リットル)1210円ということで一般 の醤油と比較されますと約1.5倍から1.8倍ということになり、誠に高く申し訳なく思っておりますが、それはあくまでも現在販売されている一般品のお醤 油との比較の中で言えることです。また、一般品とどこがどう違うのかをご理解いだかなければただ単に高い安いというようなことになってしまいますので、簡 単にご紹介しましょう。

 伝統的な醤油づくりに必要な原材料は、小麦、大豆、塩、この3点です。
しかし、伝統的でない醤油の原材料欄には脱脂加工大豆、小麦、塩、アルコール。ものによってはアミノ酸が加わっています。なぜ、同じ醤油を作るのに原材料が違うのでしょうか。
くせものは、まずこの脱脂加工大豆です。脱脂大豆とは大豆のもっている油分をヘキサンという薬剤を使用して99%油分を絞り取った後のカスです。言葉はよくありませんが、油を絞り取られてしまった大豆のカスの部分でお醤油は作られているのです。
もちろん、絞りとった油は「大豆油」という立派な製品になるので、ひとつの大豆で2つの製品をつくるという一挙両得型といえます。ヘキサンについての解説はここではいたしませんが、あまり体によくないということはいうまでもありません。
こうした脱脂大豆を使えばコストは大幅にさがりますが、大豆本来のもつうま味が絞り取られてしまいます。そこで、うま味の不足をアミノ酸で補うという具合です。
さらに、伝統製法の醤油は杉樽の中で自然発酵させ、醤油として仕上がるまでに2年から3年の歳月を費やして仕上げるものですが、この樽の中で寝かせる月日 を短くするのが醸造アルコールです。アルコールを使用すればおよそ10分の1から20分の1の時間で醤油が仕上がるのです。これが醤油の製造方法の革新と いわれるものです。
  私たち地球人倶楽部の井上さんのお醤油は、一切の薬剤を使わず、国産大豆を丸のまますべてを使って製造するという昔ながらの方法を固く守っておられます。     
醤油となる原料の大豆を樽に仕込んでしばらくたつと、見事に醤油となる部分と油分が分離しているのが解ります。井上醤油のうま味はそこに秘密があるのです。

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  さらに、一般の醤油の大部分は輸入大豆でつくられています。
輸入大豆60KGの価格は約3000円です。それに対して井上さんが契約栽培している国産の有機無農薬大豆の価格は60KGで15000円です。
輸入大豆のポストハーベスト問題等は別に致しましても、紛5倍の原料を使ってお醤油をつくっていることがご理解いただけるものと思います。
  紙面の関係上、井上さんの本当の手作り、昔ながらの製造方法を詳しくお伝えすることはまたの機会に致しますが、伝統製法のお醤油と促成製造方法というものとは全く異なるものであることをご理解いただきたいと思います。
世界に誇る日本の調味料「しょうゆ」の味を本来の醤油の味として縦承してゆくことも大切なことではないでしょうか。

 地球人倶楽部は、一般のものと比べて一部高い値段で商品をお容様にお届け致しており、そのことをいつも心苦しく思い、何とかしなければいけないと考え続けております...。
  しかし、今の日本の中で安全な食べ物を求めるには、高いコストを支払わなければならない構造というものが現実にはあるのです。
  井上醤油店の井上氏も現在6代目で、家業というものを立派に縦承していますが、私にはいつも6代目で終わりたいと言っています。苦労ばかりして益なしなのであります。

  私たち地球人倶楽部のひとつの使命は、安全な食べ物を少しでも安く会員の皆様にお届けすることです。生産者の方々とも常にこのことを話し合っています。価 格、品質、ポリシーともに皆様に充分納得していただける地球人倶楽部になりたい、常にそう考え行動してゆきたいと思っています。

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