中国冷凍ギョウザ中毒事件は、「メタミドホス」という有機リン系
の農薬がギョウザの中に混入していた過去にも例のない事件です。混
入していた「メタミドホス」が多量のため、人為的な可能性が高いと
推測され、それが製造されたメーカーなのか、あるいは日本に輸入さ
れてくるまでの流通の段階なのか、現在日中両国の警察での懸命の捜
査が続けられいます。
昨日の(2008.2.21)新聞等の報道によれば、中国製冷凍ギョウザ事件で、
みやぎ生協で回収していた中国河北省の「coop手作り餃子」の包
装材から新たに猛毒の有機リン系「パラチオン」が検出されたとの報
道があり、中毒事件は、新たなる展開をみせることになってきました。
「パラチオン」は、日本でも商品名「ホリドール」として1953 年に
本格的使用が始まり、その年には、農民70 人の死亡と1564 人の中毒
者を出し、翌年には70 人の死者と1857 人の中毒者を記録しています。
1956 年には、死者は最大の86 人を記録し、その後は減少傾向を示し
ましたが、しかし「パラチオン」による自、他殺(パラチオンを使用
した自殺や他殺)が、年間237 から900 人の年が13 年も続いたのです。
猛毒と認識されながらも20年も登録を維持し、ようやく1970 年に
なって使用禁止ということになった農薬です。農薬中毒による日本農
民たちの死亡発生は、この50 年から60 年代の「パラチオン」と80 年
代「パラコート」という除草剤によるものとが大きな事件として記憶
に残るものです。
これらの有機リン系の農薬や有機塩素系農薬は、農民に多大なる被
害をもたらしただけでなく、農作物への農薬残留と環境汚染へとつな
がっていったのです。散布された農薬は、表面に単に付着するだけで
なく、その一部は葉茎や根から吸収され、可食部へ移行することもあ
るのです。農薬はよく水洗いすれば大丈夫ということを言う方もいま
すが、可食部に浸透しているものは除去できないということです。昨
年も苺に残留農薬があり大騒ぎになりましたが、苺も大量に農薬が使
われますが、洗って食べれば大丈夫という人もいますが、気をつけな
ければなりません。特に観光イチゴ狩りなどは絶対にいってはなりま
せん。大変危険ですから。
農地に大量に散布された農薬は、雨に流され、やがては川や湖沼、
そして海へと流れていきます。水系への農薬の残留が起こるわけです。
このような農薬による水質汚濁は、川や海に住む魚たちを汚染し、魚
を好む日本人の身体に入り、蓄積されることになったでしょう。そし
て飲料水として飲むこともあったのです。更には大気の農薬の残留、
更には生態系への農薬の影響。日本産コウノトリが絶滅したのは、水
田に使われた農薬に汚染されたドジョウなどを食べたためであるとい
われているように、野生動物たちへの影響も大きく、生態系の破壊は、
回復不能に近いところまで進んでしまったのです。
そして最後は、今起こっている食品への残留農薬ということになって
くるのです。
食糧輸入大国である日本は、外国から多くの農産物や加工食品が入っ
てきており、それらに残留している農薬をチェックするにあたっては、
国産品以上に注意することが必要です。
今回の問題でも考えてみれば、よくわかることですが、外国での農薬
の使用状況が国内とは異なるということです。日本では30 年前に禁止
されている農薬が中国では今も使われているということなのです。日
本のような先進国で禁止された農薬も、発展途上国では今も使われて
おり、農薬に対する知識も管理体制も充分ではありません。
例えば、1999 年10 月、ペルーではパラチオンが食品に混入し、子供
24 名が死亡した事件がありました。
今回の中国ギョウザ中毒事件の問題は、以上お話してきたように様々
な問題を私たちに提起していると思います。日本がたどった道を、中
国もたどっているのです。
ブーメランのように、昔、日本で起こったことが中国から帰ってきた
のです。幸いにして、被害にあった方も健康を取り戻し、死者も出なかっ
たことは本当によかったと思います。
中国産は危険、国産は安全で安心などという短絡的な考え方でなく、
今一度、過去に農薬問題を経験した先進国として、中国にも教えられ
ることは教え、相互に協力していく関係を作っていくことが大切なの
ではないかと思います。
私たちの命を維持し、育んでいく源となる食べ物を作るため、危険
な農薬を使わなければならない、この大きなパラドックスは、人間が
叡智を働かせ、解決していかなければならない大きな問題です。
そのために地球人倶楽部も皆様とともに考え、さらに努力をしていか
なければならないと考えています。