第5回 有機農業について「雑穀」

2009年11月05日

有機農業についてのシリーズも、はや5回目となりました。
  4回目までは有機農業についての基本的な考え方や思考方法、また農業と森林の関係などについてお話をさせていただきましたが、私自身肩に力が入ってしまっ たようで、長く、活字が多く、なかなか読みづらい文章で、読者を大幅に減少させてしまったのではないか・‥とスタッフの指摘を受け、すごすごと反省しているところであります。
スタッフの申すところによれば、地球人情報のスペースを2ページ近く与えているのであるから、会員の皆様のために役に立つ、そして解り易い話を少しは書い て欲しいとのこと...。地球人倶楽部のポリシーの1つに他者批判や中傷をしないという項目もありますので私も素直にこれを受け入れ、更生の道を歩んでいきた いと考えているところです。
  さて、今日のテーマは「雑穀」。

 昨年(平成6年)12月5日、朝日新聞に掲載された
          -アレルギー患者に朗報- 農産物の品質と安全性認証団体
「環境保全型新需要穀類、生産、加工、流通公正取引協議会」という見出しについての記事を読まれた方もあるかと存じますが、この長い名称の協議会には私た ち地球人倶楽部も会員として加わっておりますので、会員の皆様に記事のご紹介とともに協議会と地球人倶楽部の今後の方向についてお話させていただきたいと 思います。


朝日新聞 6年12月5日
(原文ママ)
健康食品ブームもあって、アワ、ヒエなど雑穀類が注目を集めているが、農産物などの認証団体である「環境保全型新需要穀類、生産、加工、流通公正取引協議 会」(事務局:盛岡市 岩泉好和事務局長)が、このほど専用の検定袋をつくった。岩手食糧事務所の承認をうけており、この袋が広まれば「輸入品」なのに 「岩手産」と称する雑穀が流通して消費者が迷惑していた(同協議会事務局)ということも少なくなる。都市化とともに増えつつあるアレルギー患者にとって は、内容の信用できる「岩手産」雑穀が手に入り、検定袋の誕生は大きな朗報と言える。同協議会は、農業などに属さない第3者機関で、こうした団体の作った 袋が公的承認を得るのは、全国でも珍しいという。今回出来た検定袋は、加工業者等が扱う20~30キロ詰めの紙袋1種類。生産年と種類、銘柄、産地などが 記入されるほか、岩手食糧事務所の認定印や中身の安全性を保証する同協議会の認証マークが入る。また、一般消費者も、店頭で直接購入できるように 0.5~2キロ詰めの袋も年内にできる予定で産地で検査された雑穀が、そのまま消費者に届くシステムを目指している。年内にはアワ、ヒエ、キビ、ソバ、アマランサスなどを予定している。等級検査を岩手食糧事務所が行った後、同協議会の検査官が大蔵省印刷局発行の封かん用紙を袋のロにはりつける。すり替えや 増量ができなくなり、中身がほんものの岩手の雑穀であることを保証するのが狙い。


以上のようなことでおわかりいただけますように、岩手県食糧事務所などの協力を得て、本物の岩手の雑穀を消費者にお届けしよう、というのがこの協議会の設立主旨です。

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  さて、本年2月3日、盛岡にて第1回協議会の会員研修をかねた講演会ならびに生産者の皆様とのフォーラムが開催され、地球人倶楽部を代表して私も出席いたしました。
  当日の講演会のスピーカーは、「アメリカ人も知らない驚愕の農薬りんご」と題してアメリカのジャーナリスト、ラリー・ランダス氏のお話と「輸入農産物は安 全か...」と題して日本子孫基金事務局長小宕順一氏の講演がありました。前日の2月2日の各新聞に輸入りんごの残留農薬検出の記事が出たこともあり、スピー カーも大変興奮していたようです。この話の内容については、また別の機会にと考えておりますが、新聞にも出ておりましたように、TBZ(カビ防止剤)とい う農薬は、過去にも輸入リンゴジュースの中からも検出されており、目新しいものではありませんが、国産ジュースといわれているりんごジュースの中からも検 出されているという事実を皆様にもひとことお知らせしておきたいと思います。国産りんごジュースの原料の約7割は、アメリカから輸入している濃縮果汁とい われております。果汁100%という表示があたかも安心の証拠のように一般の生活者の皆様はお感じになられているようですが、地球人倶楽部がこだわるの は、果汁100%ということよりもむしろ(ジュースというからには、100%は当たり前のことです)、原材料となる果実にはどのようなものを使用し、また、どのように加工されるのかという手順の問題です。ジュースの話はひとまずおいて、最後のゲストスピーカーは、「明らかになってきた雑穀の栄養生理機能 -健康への寄与-」と題した岩手大学 西沢直行教授のお話でした。
要旨は、血中のHDL一コレステロール濃度(善玉コレステロール)は、動脈璧などの過剰になったコレステロールを除去する作用があり、その機能性によって 動脈硬化症を予防したり、軽減化する作用がある。そのため、血中のHDL―コレステロール濃度の上昇作用を有する食品およびその機能性成分を研究すること は、重要な意義をもつことになる。われわれはこれまでほとんど評価されていなかった雑穀のキビの中には、血中のHDL一コレステロール濃度を上げるという 新しい食品機能性があることを発見している。」というものです。
  さらに成人病やアレルギーにも負けない栄養価として難穀の栄養価比較表の説明がありました。
(下図参照)

(精白米を1としたときの比較)
  カルシウム 蛋白質 食物繊維
あわ 1.83 1.54 2.30 4.00
きび 1.83 1.56 2.40 3.60
ひえ 2.00 1.44 2.40 3.40
はとむぎ 1.83 2.09 1.80 5.00
大麦(押麦) 4.00 1.29 4.80 3.00
小麦 3.83 1.18 1.00 1.20
玄米 1.67 1.09 2.30 2.20
精白米 1.00 1.00 1.00 1.00

と いうように近年ますますその高い栄養価が評価され、また、米アレルギーなどのお子さんをもつ方々を中心とする需要が増えてきています。が、悲しいかな店頭 に並ぶ大半が輸入品です。岩手県農政部畑作振興課の調べでは、ソバを除く食用米穀の全国消費量3000トンの内、岩手県生産量は183トンだけ。しかも国 内生産量は、300~400トンであるから9割方が外国産のはずです。がなぜか一般に出回る雑穀の産地名には、「有機無農薬・岩手産」との表示が多い‥・ 訳です。輸入農産物ということになれば、ポストハーヴェストなどの問題もでてきます。安全だと信用してアレルギーに苦しむ子供に米穀物を与えた母親から、 良くなるどころか悪くなったという声も上がっています。当日の会議の資料の中には多くの岩手県産とうたいながら、事実に反する販売を行っている業者の例も 多く紹介されており、以前、地球人倶楽部にも売り込みをしてきた業者の名があったことにはハッとしましたが、取り扱いしなかった結論にほっと胸をなでおろ すとともに、安易に納得しなかった担当者にもこの報告をしておきました。「売れるものより、確かなものを」とのポリシーのもと、地球人倶楽部は商品を選定 して参りましたが、今まで通り厳しいチェックをさらに厳しくして会員の皆様おひとりおひとりに安心して食していただけるものだけをお届けしてゆきたい、と 当協議会に出席して決意した次第です。

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  当協議会の会員として、今後生産者の皆様とよく話し合い、本年より徐々に販売して参りたいと思っています。まだまだ生産著の人数も少なく、数量的には大き な期待もできませんが、15週より一部商品もご紹介させていただいておりますので、どうぞ一度召し上がってみてください。農業の世界にかかわりをもって約 8年、農産物の最短の話は1年です。1年で何か話がまとまれば最高で、2年から3年かかるのがごく普通といえます。岩手の雑穀のこの話も私の見るところ、 軌道に乗るのは来年か再来年であると思います。その折には公正取引協議会のマークをつけた商品を皆様にお届けできると思います(もちろん今の商品も岩手県 産です)。

地球人倶楽部では、会員の皆様のご協力を得ながら、岩手米穀の協議会を今後とも支援して参りたいと考えています。

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