愛媛のみかん生産者、二宮さんは、有機農業をはじめて20 年になります。
ミカン、デコポン、伊予柑等を作っていますが、大変な苦労を積み重ね、
やっと無農薬栽培まで後一歩のところまできています。
今年の栽培履歴を見ても、ボルドー液1 回、ベランフロアーベルという
農薬を1回だけの散布で終わっているので、本当にもう一歩なのです。
しかし、1 回でも2 回であっても減農薬無化学肥料、10 回農薬をかけて
も減農薬栽培という括りの中で、なかなか販売もむずかしくなります。
余談になりますが、二宮さんが使っているボルドー液という農薬は、
現行の新JAS法では、農薬としての扱いはされていません。ボルドー
液を何回使用しても「有機栽培」の認証をとれるのです。
何故そのようなことになっているのかは、現行の有機JAS法が外国(ア
メリカ、ヨーロッパ)の基準に沿ったものだからです。ボルドーという名
前の由来は、フランスのボルドー地方からきていますが、1880 年代、ぶど
うのベト病に有効であることが見出され使用されたのが始まりです。銅を
含む岩石から取り出した銅イオンの殺菌力を利用する薬剤で、ぶどう、ミ
カン、りんご等の栽培によく使われます。ボルドー液が外国では農薬とし
て扱われていない経緯は、自然の岩石から取り出したものであるというこ
とと、長年に渡りフランス等でぶどうづくりのために使われてきたという
実績の中で、現在のような農薬とは一線を画するものであるということの
ようです。新JAS法による「有機栽培」については、外国等からの政治
的圧力もあって、外国の基準をそのまま持ってきたことから色々と問題も
多いことについては、またあらためてのお話ししましょう。
ボルドー液は、日本では農薬として登録されており、昔から有機農業を
やっている生産者の皆さんは、現在でも農薬であるという認識のもと、
使用した場合は二宮さんのように減農薬として表示しているのです。お
いしいミカンやデコポンを作るためには、木を元気にしなればなりませ
ん。そのためには根を元気に、そしてそのためには土づくりをしなけれ
ばなりません。元気な土壌を作るには早くても10 年はかかります。また
余談になりますが、現行JAS法「有機栽培」は、3 年間無農薬無化学
肥料であれば良いとされていることも私としては疑問に思うところです
が、このことはまた別の機会にということで。
さて、二宮さんのことですが、土づくりには主に炭を使います(ミカン
ジュースの絞りカスを炭にしたもの)。これを毎年200kg~ 300kg土に
投入します。また他に、米ヌカを年に3 回。天日塩を年に2 回投入し土を
作り、木には米酢やアミノ酸、天然ニガリなどを散布してミネラルを与え
ます。20 年来、4 月から11 月までは奥さんともども草刈に精を出します。
一般的な農業は、土壌消毒をして除草剤をまけば雑草は生えてきませんが、
有機農業は草との戦いが大変な苦労としてあるのです。以上のような土づ
くりをしていくことにより、木は根をしっかりと張ることができ、化学肥
料に頼らずに土壌の中から自然の養分を吸収して元気な木になっていくの
です。
書いてしまうとこれだけのことで簡単ですが、そうはなかなかうまくいか
ないのが有機農業で、夏場から秋にかけて日照が少ない気候になると病気
がでるし、甘くてよい味のミカンもできません。
いくら良い育て方をしても美味しいものを作らなければ売れません。無農
薬無化学肥料で美味しいもの。これが二宮さんの20 年間の目標でしたが、
やっとここまできて無農薬まであと一歩。おいしい味もここ2 ~ 3 年でで
きたというのが現実です。
有機農業をやることは、最初の何年間はまず、まともな収穫はできませ
ん。農薬をかけない、化学肥料を使わないミカン畑は、病害虫が好んで集
まってくるからです。
二宮さんは大変研究熱心な方なので、色々と勉強と研究を重ね、1 年1 年
階段を上るように農薬の回数や量を減らしながらここまでやっきたという
わけです。奥さんの理解と献身的な協力があってのことであると聞いてい
ます。
地球人倶楽部は、会員の皆様に安全で美味しい農産物をお届けしていく仕
事をしていますが、低農薬のものも少なくありません。「有機JASのものを
もっとふやして」とか「低農薬のものをもっと減らして」というご希望も多く、
私たちもご要望に沿えるように努力しているところですが、二宮さんのこと
でもおわかりのように、努力して努力して低農薬ということになってしま
う生産者の方々がたくさんいらっしゃいます。
無農薬無化学肥料で食べ物を生産していくむずかしさを知るものとして、
会員の皆様にもご理解を賜りたいと思っています。
さて、二宮さんですが、今年も減農薬無化学肥料のミカン、ポンカン、伊
予柑を皆様にも現在お届けしております。味はここ最近としては美味しい
ものができています。
今年も二宮さんの販売は残念ながらかんばしくなく、在庫も多く、何とか
頼むと連絡がありました。不ぞろいの伊予柑を皆様にご案内していますが、
二宮さんが20 年かけてきた作品です。是非ご賞味ください。
来年の秋には無農薬でできたよ、の声が聞きたいものです。