第7回 有機農業について「風土と農業」

2009年11月05日

山梨県芦川村、私がこの村にかかわりを持つようになって早7年目となります。
この、昔の日本を代表したような素朴なこの村は、以前に一度、会員の皆様をご案内したこともあり、ご存じの方も多くいらっしゃることと思いますが、新しい会員の皆様に簡単にご紹介させていただこうと思います。
  芦川村は、釈迦ケ岳(1641m)、黒岳(1793m)、破風岳(1674m)の3山に囲まれた、海抜900m~1000mの間に位置する村です。黒岳の 麓からはじまる芦川渓谷に沿うように集落が形成され、村内はすべて山間地であるため、林野率は92%ときわめて高く、人口や世帯数においては年を追って、 過疎化傾向が進行しています。黒岳の足元となる源流地域は湿度が低く、夏でもセーターがほしくなるほどの爽やかな気侯であり、山々から集められた水がひと つの流れとなって芦川の源を作ります。この源流域は、スズランの群生地でもあり、初夏、白樺林の足元一面に可憐なスズランを咲かせます。冬の寒さが厳しい だけ春と夏の芦川村の風景は素晴らしく、美しいものです。源流の水は、典型的な山里の趣が漂う芦川村へと流れています。この芦川流域の右岸の急な斜面に、 けっして広くはありませんが丁寧に開墾された畑があります。丹念に積み上げられた石積みの段々畑。斜面に幾重にも重なる石垣があって、見事な段々畑を形成 しているのです。
この畑で、芦川村ならではの高冷地の気侯を充分に生かした野菜作りが行われ、古くからの特産品として知られるコンニャクをはじめ、じゃが芋、人参、ほうれん草、とうもろこし、ソバなどの農産物が、この風土の中でゆっくりと生育しながら濃い甘みと滋味のある味わいを作り出しているのです。
 山々に囲まれた畑は、大自然の恵みをうけ、肥沃で豊かな土壌を生み出しました。健康な土壌は、健康な野菜を育て、野菜が本来もつ本当の実味しさを私達に教えてくれるのです。
 芦川村における地球人倶楽部の生産者代表は、藤本さんで、よく二人で話すことは、「なぜこんなに味のよい野菜がとれるのか不思議だね」ということなので す。昨年末のこと、北海道の生産者から有機栽培で本当においしいじゃが芋があるので試食して欲しいと送ってこられました。ちょうど藤本さんからもじゃがい もをいただいていたので、この2つを早速同じ条件で蒸してみました。藤本さんの方は7分で芯まで火が通りましたが、北海道のものは15分かかりました。しかしながら芯はいくら加熱しても火が通らず硬いままで、食べることができませんでした。味は段違い、同じ有機栽培のものでもこれだけ歴然とした差は何なの でしょう。私にとっても大きな驚きでした。
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  この事実は、藤本さんの農業技術が北海道の生産者より優れているためではないと私は思うのです。芦川村のもつ自然の風土の仕組みが、このおいしいじゃが芋を作り上げたのであると私は考えています。風土は環境といっても良いと思いますが、この自然の風土こそが農業にとって一番大切で重要なことであると私は考 えて、地球人倶楽部発足以来、その条件にあった風土をもつ、そしてこころある生産者を探し求め続けて現在に至り、今後もさらに追及し続けて会員の皆様に本 物の農産物をお届けしてゆこうと思っています。
藤本さんをはじめとして芦川村の農産物は、今年6月より入荷がはじまり、皆様の食卓に彩りを添えることになります。夏場のほうれん革、じゃが芋、人参は、 高地冷涼な土地ならではのものですし、秋には、藤本さんの奥さん手作りのぬか漬けタクアンなどなど、実に味わいのある農産物をご賞味いただき、私の申し上げていることを確認いただければ幸いです。

  地球人倶楽部の考える有機農産物とは、有機で栽培された作物、という意味ではありません。このような言葉の世界は、あまり評価しておりません。地球人倶楽部の言う有機農産物とは、有機で優れた自然の風土をもつ自然の恵みを充分に行かせる環境をもち、そして生産者は技術だけではなく、こころある人々でなければならないということです。
今シリーズ第2回目でご紹介させていただいた、岩手県の吉塚さんは、本物のこころをもつ酪農家であります。一般の酪農家の一頭の牛の年間の乳量は、 8000リットル~9000リットルと言われていますが、吉塚さんの牛は1500リットル~2000リットルくらいかないかというところです。同じ価格で農協へ売っているわけですから、入ってくるお金は-般の酪農家の1/5ということになります。
何のためにこのような馬鹿なことを20年以上もやり続けているのでしょうか・・・。それは安全でおいしい本物の牛乳を作りたいと言う心であると思います。
 風土と生産著の心、その2つが本当に素晴らしい農産物を作り上げると私は信じています。そのようなものを会員の皆様に届けたいという気持ち、それが地球人倶楽部の源流なのです。
  さて、話は戻り、藤本さんは芦川村の村議会長で、実は皆さんがたべている梶原さんのコンニャクは、梶原村会議員の作品?です。ここには昔日本のどこの地域 でも見られたなつかしい農村の風景は、未だずいぶん残っています。かやぶきの家もあちこちに見ることができ、昔の日本の姿が、昔の日本の自然がそこにある ことがよくわかります。
  風土と農業、それは第1回目の「4つの環」でもお話しをしたように大きな関係があります。豊かで肥沃な土壌は、土壌のなかに存在する何億という微生物の協 力でつくられています。そしてその土地のもつ自然の風土は、植物の成長に大きな影督を与えているのです。このような自然の協力の中でこそ、健康な農作物が育ち、そのことは4つの環を次々と伝わり、私たち人間に健康を与えてくれるのです。健康で育った野菜が生命力をもっているということはよく言われてきたこ とですが、現在ではそのことが科学的に証明される時代にはいってきています。あと10年もしない問に、そのことがはっきりとしてくると思います。
 食物のもつ本来の栄養素とそれを食べる動物や私たち人間の健康とは、大きな大きな関係があります。そのことが私のテーマであり、地球人倶楽部のテーマでもあるのです。トマトがトマトではなく、卵も卵ではなく、牛乳も牛乳でない...。
それは、姿形は同じであっても、全く違うものであるといっても過言ではないでしょう。私たち地球人倶楽部の仕事は、自然から遠く離れていってしまった食べ 物を、昔のように自然に近づけていくことであると考えています。自然に近づけば近づくほど生産量や収量は上がらず、収入もあがりません。しかしながら、地球人倶楽部はそういった生産者を守り、育て、共に進んでいかなければならないと考えています。
  吉塚さんの例をあげるまでもなく、誰かが手を差しのべ協力し、助けなければ彼の人生は無駄になってしまうのです。彼の人生を何の意味もない、ということに することは私にはできません。何としても意味のあることにしなければならないと考えています。これらのことは、会員の皆様のご協力あってこそできるという ことは言うまでもありません。

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わ れわれの倶楽部は、会員何万などという大規模な組織ではありません。しかしながら、地球人倶楽部は、より自然に近づいて自然の営みの中で健康な農作物を栽 培しようとする生産者の方々ととみにありたいと考えています。そして、健康な生活は自分自身でつくっていくものだと考える生活者の皆様を応援してゆきたい と思います。自然を愛し、健康を大切にしてゆくという共通の目的をもつ人たちの手と手を結ぶ共感のネットワークを作っていきたいと思っています。風土と農 業のテーマから大きく外れてしまったかもしれません。お許しを頂いて今回はこの辺で。いざ岩手に出発です。

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